FC2ブログ
2010.10.01 白熱教室
「白熱教室」が面白い。

白熱教室とは、ハーバード大学で行われている、とある授業のこと。
その授業内容は、多様な価値観が混在する今の世の中、
道徳的に何を正義と定義するべきか?そしてその根拠は何か?について、
身近な問題をテーマにしながら、生徒と教授がディベートするもので、
その授業のあまりの人気ぶりと盛り上がりぶりに「白熱教室」の名が付いた。

この授業の教授は、今、どこの本屋に行っても
一番目立つところに平積みしてある、
「これからの正義の話をしよう」の著者、M・サンデル。
(この本自体、白熱教室で議論されていることについて書かれている。
 300ページ以上あるヘビーな本だが、翻訳が良く、意外と読みやすい。
 原著は「JUSTICE」)

先日、サンデル教授が来日し、東京大学で同じ授業を行った。
その様子を、NHKで放送していたのだが、グイグイ引き込まれてしまった。

この授業でサンデルが1つ目に挙げたテーマは、
「イチローの年俸15億円は公正だと思うか」。

サンデルは言う。
「日本の教諭の平均年収は400万円。
 イチローは、日本の教諭の約400倍の年収に値すると思うか?」

多くの人は、「値する」と挙手する。

しかし、サンデルが続けて、
「オバマ大統領の年収は3500万円だ。
 イチローはオバマの42倍の年収に値すると思うか」

こう聞かれると、「値する」と挙手する人数はグッと減る。
(しかしこれは否定的というより、皆悩んでいるように見える)

その後サンデルは、生徒に自由に意見を述べさせる。

ある人は「自由市場の下で決められた価格だから公正だ」と言い、
ある人は「オバマとイチローでは責任の及ぶ範囲が違う。
イチローはオバマの42倍には値しない」と言う。

この授業のポイントは、サンデルがどちらの意見も否定しないこと。

それぞれの意見について別の角度から追求し、深い領域まで踏み込み、
ベンサム、カント、アリストテレスなどの哲学の論理に当てはめていくが、
サンデルは、そのどれもが間違いだとは言わない。

反対意見は生徒に委ね、
そこから白熱したディベートが展開される。

生徒達は、時に考え、意見に詰まりながら、
自分の道徳的な価値観を確認、展開する。
そして闇雲に相手を攻撃することなく、
冷静に相手の意見に反対、または部分的に賛成する。
(そこはさすが東大)

この授業の目的は、正しい道徳観や哲学を“教えてもらう"ことではなく、
世の中にはいろいろな人がいて、いろいろな意見があることを知ること、
そして、それについて“議論すること"にある。

道徳的価値観は、意外と揺らぎがちである。
正しいと思っていても、違う角度から観ると、
それは一概に正しいとは言えなかったり、
ふだん自分が取らない立場の考え方も、
順序立てて聞いてみるとあながち間違いではないと思えたりする。
また、様々な考えを聞くことで、
新しい道徳的理論や価値観を知ることができる。
だから、“議論すること"は何よりも大切なのだ。


後半のテーマは、「罪に対する謝罪はどこまで及ぶべきか」。

一つは、弟が殺人を犯した場合、あなたは弟を警察に突き出すか否か。
そしてそれは何故そうするのか。

もう一つは、過去の日本人が犯した罪を、
今の日本人が謝罪する必要があるか否か。
それは、何故そう思うのか。

いずれも現代社会に深く関係している問題である。
ニュースを見ながらぼんやりと思いを巡らせることはあっても、
じっくりと結論が出るまで自分の中で考えることはあまりない。

このテーマについても、とても白熱したディベートが展開された。

この授業自体は道徳、倫理についての議論だが、
これは何もそういった話に限ったことではないように思える。

例えば大人数での会議の場であっても、
自分の理論こそ正しいと意固地になったり、
その場の雰囲気で妥協点を探すことよりも、
まず議論して、様々な意見を引き出すことこそ重要なのだ。


この「白熱教室@東京大学」は、
10/3、10/10に再放送があるらしいので、興味のある方は是非。



スポンサーサイト



Secret

TrackBackURL
→http://dandimagine.blog13.fc2.com/tb.php/210-84cd9640