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THE OUTLINE 深澤直人×藤井保
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雑誌「MODERN LIVING」の連載をまとめた一冊、
『THE OUTLINE』の発売を記念した、
深澤直人×藤井保のトークショーへ。

この連載は、
INFOBARやプラマイゼロ、無印良品でお馴染みの
世界的なプロダクトデザイナー深澤直人さんのプロダクトを、
マグライトやJR、魚沼産コシヒカリなど、
日本の広告界を代表する写真家である藤井保さんが撮影するというもの。

藤井さんが撮影する際にいつも心がけているのは、
“すべてを言わないこと"だという。

1から10まで説明して「はい、どうですか?」より、
被写体の一番魅力的なところ、チャーミングなところだけを見せてあげて、
あとは見る人に想像してもらう。
それが作る側、見る側双方にとって、最も豊かで幸せなことではないかと
藤井さんは言う。

Read between the line.
行間を読むこと。
行間、つまり何もないところに何かを感じることのできる感性の豊かさ。
読んだ人、見た人が各々想像できる楽しさ。自由さ。

忙しくてゴミゴミとした東京の街の中では、つい忘れてしまいがちな大切な部分を、
藤井さんは常に持っていて、それを写真の中に収めている。

深澤さん曰く、藤井さんの写真には誇張が一切無いのだと言う。

普通なら被写体を美しく見せようと、あちこちから光を当てたりして、
意図的になってしまうところを、藤井さんはそれを一切やらないのだという。

そこにあるものをそのまま撮る。

言葉で言うと簡単だが、一番難しいことだと思う。

以前、佐藤可士和さんがN702iの広告を作るときに、
製品をただ真正面から撮っただけの写真で行くか、
自分の信念を曲げてでもタレントなどを使ったものにするべきか、
どちらが本当に商品のため、売上のためになるのか悩んだが、
最終的に“迷ったときは難しい方を選ぶ"という信念にもとづいて、
前者を選んだという。
なぜなら“それ(難しいもの)が一番強いから"だそうだ。

藤井さんの写真は、物質としてその中に写っているものは1つか2つなのに、
そこに含まれている情報量はとてつもなく多い。

一方、そういうものをプロダクトとして作れるのが、
深澤さんだと思う。

INFOBAR、プラマイゼロの加湿器など、
非常にシンプルな形状でありながら、
他の装飾的な製品よりはるかにリッチな佇まいをしている。

深澤さんの著書「デザインの輪郭」の中の言葉。

~ノートの罫線をデザインしてくださいと依頼されたときに、
 真っ白な紙を提示してもいい。
 「何もデザインしていないじゃないですか」といわれても、
 それがいちばんいい答えならそうすべきです。

 デザインを依頼されるということは、
 何かをするということを前提にデザインが始まる。

 でも、何もしないということから始めてもいい。


深澤さんだからこそ言える言葉だけど、
とても勉強になる。

話が前後してしまうが、
もう一つ、藤井さんが話された興味深い話を。

藤井さんの写真はコントラストと彩度が低いのが特徴だが、
元々日本人の美意識には、そういったものが根付いているという。

昔の日本家屋は庇が長く、日光が直接部屋に入ってこない。
庭石に反射した光は、障子でディフューズ(拡散)されて、
部屋の奥の仏壇をぼんやりと照らす。
柔らかい光は発色を抑え、仏像は光の反射によってではなく、
自ら発光するかのように鈍い光を放つ。
その感じこそ、日本人の持つ“落ち着く感覚"につながっているのだ。

そしてそんな光の中で食した“お吸い物"。

谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』によれば、
黒い塗りの器に入れられた透明のお吸い物は、
今のように目で見て味わうものではなかったのではないかという。
蓋を開けたときの湯気と立ち上る香りなど、
視覚以外の感覚を働かせることで味わいが豊かになっていたのだという。

視覚に頼りすぎている現代社会は、
その頃の豊かな感覚を失いつつある。
視覚以外の四感を研ぎ澄ませば、
人はもっと物事を豊かに捉えられる。

藤井さんの写真には、
そういった思いも込められているからこそ、
あれほど強く印象に残るのだろう。

とてもいい話が聞けた1時間半でした。


↓JR九州ポスター。
 「愛とか、勇気とか、見えないものも乗せている」 AD:副田高行 C:仲畑貴志





by tbm18363 | 2009-10-08 02:31
| クリエイター・アーティスト



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