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『アートディレクションの黄金比』
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少し前に誠文堂新光社から出版されたこの本、
本屋のデザインコーナーで結構目立っていたので読んでみた。

アートディレクター達の生い立ちと
デザイン論について書かれている。

個人的には、生い立ちにはあまり興味がない。

生い立ちを探ることで成功した要因を探ろうとするのは、
あくまで結果論に過ぎない気がするから。

まぁ、そこまで深く考えることでも
ないのかもしれないけれど。


掲載ADは計9名。
植原亮輔、佐藤可士和、佐野研二郎、水野学、米村浩、
佐藤直樹、中島英樹、藤本やすし、タナカノリユキの各氏。

この中で僕が面白かったのは、佐藤直樹さん。

今、世の中で何となく良しとされているデザイン論に
疑問を投げかけている。

例えば、デザインは情緒的なことよりも、
伝わるスピード感や効率が大切だという考え方がある。

しかし佐藤さんは、効率ばかり優先すると、
例えばオリジナルのフォントにこだわる理由はなくなるし、
人は何を良しとして、何を良しとしないのか、
その根本的なところが抜け落ちてしまうと言う。

また、力強くシンプルに伝えることが
デザインの醍醐味だという考え方に対して。

世の中にはいろんな人がいて、
それぞれが全然違うところを見ている。
そうするとシンプルなデザインが、
暴力的な押しつけになる可能性だってある、と言う。

ほかにも、
アートディレクターが、困っているクライアントに対して、
即効性のある処方箋を与えるという考え方は違うと思う、とか、

アートディレクションはあくまでアートディレクションで、
マーケティングやコンサルティングではない、とか。

特定の誰かに対して言っているわけではないと思うけれど、
何となく“ADってこういうこと?”という、
業界に蔓延する安易なロジックみたいなものに
ブスッと釘を刺していて、さすがは佐藤直樹さんという感じ。
これは単なるアンチではないと思う。

「売上が上がる」、「効率的に伝わる」。
そういったことばかり目指していると、
貧しくなってしまうのではないか、という佐藤さんの言葉に、
ドキッとしつつ、深く考えさせられたのであった。


ちなみにこの本、
『アートディレクションの黄金比』というタイトルだけど、
具体的な方程式やノウハウみたいなものについては、
あまり書かれていません。

あくまで各氏が考える総体的なデザイン論。

まぁ、当然と言えば当然だけど。